中医学(中医学基礎理論・中医診断学・中医内科学)を詳しく説明する一般社団法人国際伝統中医学協会の「中医学大辞典」
気

気の概念

気とは、自然現象に対する古代の人々の素朴な認識である。気は世界を構成する最も基本的な物質であり、宇宙におけるすべての事物は、気の運動と変化によって生み出されると考えられる。この観点が医学分野に取り入れられると、気が人体を構成する基本的物質であると考えられ、気の運動と変化によって生命活動を解釈するようになった。

古書には
「人体は物質であり、天地の気を受けて生存している」
「人の生命活動も、気を物質的な基礎としている」

という記述がある。これらの認識に基づいて、中医学での気の概念をまとめると、次の2つになる。

  • 人体を構成し、その生命活動を維持している身体の中を流動している精微物質であり、強力なエネルギーがあって絶えず運動する特性がある。
  • 臓腑、組織の生理機能。

但し、この2つは相互に関連しあっており、前者は後者の物質的基礎であり、後者は前者の機能的現われであるという関係にある。

物質的なもの…人体を構成し、その生命活動を維持させる精微物質。

機能的なもの…臓腑、経絡、器官の「気」とは、それらの機能を指す代名詞。

気の生成

人体の気は、父母からもらった先天の精気と、飲食物から得た栄養物質(水穀の精気のこと「穀気」という)、そして自然界の清気(酸素)によって作られている。

肺、脾胃、腎などの臓器の総合作用を通じて、先天の気、穀気、清気の三者が結合されて生成される。

気の生成は先天より受け継ぐものの他は、主として後天の正常な飲食の営養と良好な自然環境に依存している。

関係する内臓は腎、脾、肺が中心となる。これらの三臓の生理機能が正常で協調関係を保っていれば、人体の真気は充実するが、腎、脾胃、肺のうち、いずれか1つの生理機能のバランスが失調すると、気の生成や生理機能に影響し、気虚などの病理変化が発生する。気の生成では、脾胃の運化が最も重要である。

人が生まれてから飲食物の栄養によって生命を維持し、身体は脾胃の受納と運化によって飲食物中の栄養物質を取り込む。「先天の精気」は「水穀の精気」で補充する必要がある。

気の種類

人体における気は、分布部位の違いとその来源や機能の違いにより、元気、宗気、営気、衛気などの名称がつけられている。

元気

元気は「原気」、「真気」ともいわれる。これはたくさんある気のうちで、最も重要で基本的なものであり、生命活動の原動力でもある。

成分と分布:

元気は腎が蓄えた精を主成分としており、先天の精からできるものであるが、その元気の維持及び発展には、必ず後天の精気により、絶えず滋養されていることが必要である。

したがって、元気は先天的に受け継いだものだけではなく、水穀の精気を作り出す脾胃の運化と深いつながりがある。元気は強い活動力をもつ精微物質であり、三焦を通じて全身に分布しており、内は臓腑から外は腠理、肌肉、皮膚にいたるまで、全身を流れめぐり、存在しないところはなく、到達しないところもなく、いたるところに行きわたっている。

人体の各臓腑、組織は元気の作用を受けて、各々独自に機能している。この意味から、元気は人体の新陳代謝の原動力であり、臓腑の機能活動を推進する原動力でもあると考えられる。

主な働き:

元気の主な機能は、人の成長や発育を促進し、臓腑経絡など各組織器官を温めて生理活動を始動させる。元気が充足すればするほど、臓腑、組織の働きは活発になり、身体は健康で病になりにくい。

逆に元気不足になると臓腑の機能は低下し、外邪に対する抵抗力が弱まり、病になりやすくなる。元気の作用が衰えることは、種々の疾病を生じる原因となる。したがって、日常、常に元気を保養するということは、健康の維持に非常に重要なことである。

宗気

宗気とは、胸中に蓄えられる気である。胸中の宗気が蓄積した部位を「上気海」、ま たは「膻中」と呼ばれている。

成分と分布:

宗気は自然界より吸入された清気と、脾胃により消化吸収された水穀の精気が結合して作られ、酸素と血液成分が結合したものと考えてよい。したがって、肺の呼吸機能と脾胃の運化機能は、宗気の生成に直接影響を与える。

宗気は肺で形成され、胸中に集中し、心肺に注ぐ。また、気の運動の出発点でもある。

主な働き:

  • 肺の機能を維持し、肺の呼吸を積極的に推進する機能である。宗気が不足すると、呼吸が浅く短くなり、声音が低く、力がなくなる。
  • 宗気は絶えず心脈の中に注ぎ込まれており、そこで心気となり、血液の運行を援助している。宗気が不足すると、血脈が鬱滞してしまい、心の機能に影響し、心肺両虚の状態、すなわち、肺性心の状態となる。

営気

営気とは、血と一緒に脈中を流れている気である。営気は「栄気」とも呼ばれている。この「営」は営養と経営の意味を持っている。

経営とは、すなわち「進」と「出」である。「進」は営養物質の生成過程であり「出」は営養物質が合成された後、全身の各部分にその必要に応じて供給することを意味している。

成分と分布:

営気は、飲食中の精微物質が脾により生化されたものであり、水穀の気の中でも比較的栄養豊富な物質であり「営」と「血」は同源異名でもある。営気は血脈中に分布しており、血液の一部分として循環することによって、全身を栄養している。

営気は血 と一緒に脈内を走行しており、両者は非常に密接な関係があり、別々に考えることができないことから「営血」 と呼ばれることが多い。

主な働き:

営気の生理機能には、栄養作用と血液を作り出すという2つの作用がある。「水穀の精微」のうちのエッセンスが営気の主要成分である。それは臓腑や経絡などが生理活動するために必要な栄養物質であり、また血液成分でもある。

衛気

衛気は、脈外を流れる気である。「衛」は守衛、すなわち守るという意味である。人々が日常、健康で暮らしていけるのは、この衛気が絶えず働いて、外邪より守っているおかげである。

成分と分布:

衛気は主に水穀の気から化生したものである。人体の陽気の1つであることから「衛陽」ともいわれる。これには「標疾滑利」という特徴があり、つまり活動性が高く、動きが速いという性質がある。

衛気は脈管に拘束されず、脈の外をめぐっており、皮膚の中を循行し筋肉の間を走り、内は胸腹部内の臓腑に至るまで全身にくまなく分布 している。

主な働き:

その衛気の流れ方は、上述のような特徴を持ち、その生理機能には主に3つがある。

  • 体表を防衛し、外邪の侵入に抵抗する 。外邪が侵入してきた場合、まず最初に戦うのがこの衛気であり、高熱前の悪寒戦慄は、衛気が邪気に抵抗している1つの現れで あるといわれている 。
  • 衛気は汗腺を開閉することにより体温を調節する 。
  • 臓腑を温照し皮毛を潤沢にする。

元気…(真気、原気)先天の精と後天の精により生成され、生命活動の原動力。

宗気…胸の中にあり、呼吸と循環を主っている。

営気…水穀の精微から作られ脈中を巡っている。血液に化生して、全身を営養する。

衛気…水穀の精微から作られ、脈の外を巡っている。体表に散在して、外邪の侵入を防御している 。

このように「気」は、人体のさまざまな部位に分布しており、その生成の源に違いはあるが、それらを総括すると、腎中の精気、水穀の気、及び、自然界から吸する清気の3つにまとめることができる。腎中の精気は、父母から授かる先天の精気である。

水穀の気は、脾胃で消化吸収される後天の水殻の精気である。清気は自然界に存在し、肺を経て体内に吸入されるものである。この三つの気は、肺、脾、胃、腎などの臓器の生理機能の作用により、結びついて気となる。

したがって、気がたくさん生成されるか否かは、先天の精気の充足度、飲食物の栄養の多い少い、肺、脾、腎の三臓の機能が正常か否かに関わっているといえる。なかでも脾胃の受納と運化作用が最も重要である。

人の気には、以上のような4つの「気」のほかに「臓腑の気」「経絡の気」がある。「臓腑の気」と「経絡の気」は元気から派生したもの であり、臓腑や経絡を流れる元気を、臓腑や経絡の気と呼んでいるに過ぎない。それは元気の一部分であり、臓腑や経絡を構成する最も基本的な物質であり、臓腑や経絡の生理活動を維している。

中医学には、気に関する名称がたくさんある。

  • 飲食物から吸収した栄養物質を「水穀の精気」とか「穀気」と呼ぶ。
  • 発病させる物質を「邪気」と呼ぶ。
  • 体内に存在する正常でない水液を「水気」と呼ぶ。
  • 身体の生理機能や抵抗力を「正気」と呼ぶ。
  • 寒、熱、温、涼という4つの性質と作用を「四気」と呼ぶ。

このように中医学では「気」には様々な意味がある。

気の作用

気は生命を維持するための基本物質であり、人体に対してきわめて重要な作用を行っており、様々な部位に分布し、それぞれ独自の働きを持っているが、それらの主な作用は次の5つにまとめることができる。

推進作用

気は活動力の強い精微物質である。人体の生長、発育、各臓腑、経絡の生理活動、血液の循行、津液の生成や輸布、排泄はすべて気によって推進されている。

気虚になると、この推進作用が低下し、生長、発育の遅れ、臓腑、経脈の機能減退、血液の生成不足と運行無力、水液の輸布排泄の失調など各種の病変が現れる。

温煦作用

気の温煦作用は次の3つに現れる。

  • 関連する組織器官を温め 、正常な体温を維持する。
  • 全身の各組織器官を営養してその生理活動を維持する。
  • 血と津液などの液状物質の正常な運行を維持する。

気の温煦作用が減退すると、畏寒怯冷(異常なほど寒がる)、四肢不温(四肢が温まらな)、或いは臓腑、経絡などの組織器官の機能低下や血と水(津液)の運行が遅くなるといった症状が現れる。

防御作用

人体の防御作用はとても複雑であり、気、血、水(津液)と臓腑、経絡などの組織器官の多方面の総合作用によるものであるが、特に、防御作用においては、気が大きな役割を果たしている。気の防御作用は、主に次の2つに現れる。

  • 全身の肌表(体表及びそれに連なる肉の部分)を守り、外邪の侵入を防御する。
  • 外邪がすでに人体に侵入してしまった場合、気はこの病邪と闘ってそれを外へ追い出し、健康を回復させるように働く 。

気の防御作用が弱まると、抵抗力が低下し、外邪を受けて発病しやすくなり、発病後に正気が邪気に対抗できないと、病位が徐々に深まり、病症は軽より重へと進行することになる。

固摂作用

気の固摂(こせつ)作用は次のものがある。

  • 血液が脈管の外に溢れないよう制御する。
  • 汗や尿の排出をコントロールする。
  • 精液が漏れないように固摂する。

気の固摂作用が弱まれば、体内の液状物質が多量に失われる危険性がある。気が血を固摂しなければ出血し、気が水(津液)を固摂しなければ汗や尿の量が増え、多汗、尿漏れが発生し、気が精を固摂しなければ遺精や滑精、早漏などが起こる。

気の推進作用と固摂作用とは、相反し矛盾する働きでありながら、なおかつ補助しあうという関係にある。

例)血に対する気の作用:

気は一方で血の運行を推進しながら、一方ではまた血の運行を制御している。この2つの作用があって初めて、血液は正常に循行する。気虚となり、推進作用が減退すると血行不良が起こったり、瘀血を生じることもある。また、気虚のため固摂作用が減退すると、出血を起こすこともある。これは血液循環と水液代謝を維持する重要なポイントである。

気化作用

気化とは、気の運動とそのために発生する変化を指す。

  • 血や水(津液)を飲食物から化生し、津液を輸布して汗や尿に変化させることは気化作用の具体的な現れである。
  • 精、気、血、津液の間の化生を指す。精は気に化し、気は血に化す。この作用を気化と呼んでいる。
  • 臓腑のもつある種の機能を指す。膀胱の働きである排尿作用は「膀胱の気化」と呼ばれており、三焦のもつ水液代謝作用は「三焦の気化」と呼ばれている。気化作用が失調すると、ただちに飲食物の消化吸収と糟粕の排泄が影響され、また、気、血、水(津液)の新陳代謝と相互転化、汗液や尿液の生成と排泄に影響が及んで種々の病変が発生する。したがって、気化作用は、体内物質代謝の過程であり、物質とエネルギー転化の過程であるといえる。

以上、5つの作用はおのおの異なった性質持ちながら、互いに密接に関わりあい、相互に助けあって作用しており、根本的にはすべて元気の正常な活動である。元気は各臓腑に分布して臓腑の気となり、各臓腑の生理機能は元気の生成と運行に密接な関連を持っている。

すなわち、腎の蔵する精気、肺の吸入する空気、脾胃が運化した水穀の気が元気を生成し、心の拍動と肺の呼吸が元気をを運行させ、肝の疏泄機能が気機を調節しているのである。

気の運行

気の運動と運動形式

人体の気は、強い活動性を持つ 一種の精微物質であり、絶えず動いて全身の各臓腑、経絡などの組織器官をめぐっている。

気の運動は「気機」と称されている。

気の種類によってその運動形式は異なるが、気の運動の基本形式は「昇、降、出、入」の4つにまとめられている。これは人体の生命活動を表現する一種の表現方法でもある。気の昇降出入の停止は、生命活動の停止を意味している。昇降出入という気の運動形式は、各臓腑の機能、さらに臓腑間の協調関係をよく示している。

例)肺は呼吸機能を主っており、宣発(昇)と粛降(降)の作用があり、吐故納新[古い気を吐き(出)、新しい気を納める(入)]を行っている。また臓腑間の関係としては、肺は呼気を主り、腎は納気を主っている。心火が下降するのに対し、腎水は昇り、脾に昇の作用があるのに対し、胃には降の作用がある。

気の昇と降、出と入は、正反対の運動であるが、1つ1つ各部分の生理活動を見ると 、気の昇降出入をすべて備えているわけではなく、肝と脾は昇、肺と胃は降を主とするなどのように、偏りがある。しかし、体全体では、昇と降、出と入のバランスが取れていないと、正常な生理活動が維持できない。したがって、気の昇降出入は、生理機能のバランスを保つ上で重要なポイントとなる。

各臓腑の機能が協調的に作用しあうと、臓腑の気の昇降出入が相対的にバランスよく行われ、正常な生理作用を維持することができる。これを「気機調暢」 という。「調暢」とは、スムーズに流れることである。

気の昇降出入がうまく行われなくなったりして、そのバランスが崩れると「気機失調」 という病理状態になる。

「気機失調」にも様々な種類がある。

  • 何らかの原因によって、気の昇降出入が障害されたものを「気機不暢」と呼ぶ。
  • 局部の気が滞ったものを「気滞」と呼ぶ。
  • 気の上昇が激し過ぎ、下降が不足したものを「気逆」と呼ぶ。
  • 気の上昇が不足し、下降が激しいものを「気陥」と呼ぶ。
  • 気が体内から脱するものを「気脱」と呼ぶ。
  • 気が体表を流れずに、体内で固まったものを「気結」とか「気鬱」と呼び、程度のひどいものを「気閉」と呼ぶ。

またそれらにより、五臓六腑や身体の上下、内外の 協調性と統一性に影響が及んで種々の病証が起こる。

例)肝気鬱結、肝気横逆、胃気上逆、脾気下陥、肺失宣降、腎不納気、心腎不交などの病証が現れる。

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