中医学(中医学基礎理論・中医診断学・中医内科学)を詳しく説明する一般社団法人国際伝統中医学協会の「中医学大辞典」
寒邪

寒邪<六淫>

寒は冬季の主気である。冬の気候は寒冷であり、気温が急に下がり、寒邪が人体に侵入しやすい。薄着により寒邪を受けることもある。また、冬以外の季節でも雨に濡れたり、労働して汗をかき、風にあたることも寒邪を受ける原因となる。

寒邪には外寒と内寒がある。外寒は寒邪が外襲したものであり、その発病にも傷寒と中寒の違いがある。寒邪が肌表に留まって衛陽を遮ったものは「傷寒」という。寒邪が裏に直接侵入(直中)して臓腑の陽気を傷つけたものは「中寒」と称される。内寒は身体の陽気が不足して、温煦作用が失われた病理現象である。

外寒と内寒には違いがあっても、それらは互いに関係があって影響を及ぼしあう。陽虚内寒の状態ならば外寒を感受しやすいし、外来の寒邪が身体に入り、長い間、積もって去らないと、身体の陽気を損傷して内寒となる。

寒邪の性質と発病の特徴

寒邪による症候は、自然界の寒冷、結氷、凝固などの現象に類似している。

寒邪を受けると、人間は局部あるいは全身の冷えを感じる。これは体温が体内の陽気によって支えられており、寒邪がその陽気を障害するかである。人体の陽気には、衛気・腎陽・心陽・脾陽・肝陽などがあり、寒邪は肌表や呼吸器官あるいは直接脾胃に侵入してくることが多いので、陽気の中でも特に衛気や脾陽を障害しやすいことが分かる。 

脾陽は脾気を温め脾の運化作用を促進しているが、寒邪に襲われてその作用が弱まると、嘔吐・泄瀉・腹部の冷痛などの症状があらわれる。 経絡や筋脈の寒邪による障害は、凝滞と収引の性質が同時に出現することが多く、四肢がひきつって痛み、温めると症状が軽減するのが特徴である。

寒は「陰邪」陽気を損傷しやすい:

寒は陰邪であり、陰の属性があるため「陰盛則寒」という。また、寒が盛んになると陽気は相対的に衰え、体内の陰陽のバランスがくずれる。陽気が損なわれると、温煦や気化作用が正常に作動しなくなり、陽気が衰退した寒証が現れる。

外寒が肌表を侵襲すると、衛陽が遮られて悪風、悪寒する。寒邪が脾胃に直中すると、はじめは院腹冷痛、喜温、水様の嘔吐や下痢などの脾胃実寒の症状として現れるが、ついで食欲不振、足冷元、気力の衰えなどの陽気虚弱の症状が現れる。

寒の性は凝滞:

「凝滞」とは、凝結や滞って通じないという意味。人の気血水(津液)は阻まれることなくスムーズに流れ、常に循環しているが、それは陽気が温煦と推進をしているからである。しかし、寒邪には、人体の気血、水(津液)を凝集、滞らせ、そのスムーズな流れを失調させる特徴がある。陰寒の邪が人体に侵入すると、陽気の温煦と推進作用が抑えられ、そのために経脈の気血が凝滞し、スムーズに流れなくなる。気血が滞れば通らず、経脈が通らなければ痛みが発生する。

「不通則痛」といわれているが、これにより、頭痛、骨節痛、腹痛など多くの疼痛症状が起こる。

寒の性は収引:

「収引」とは、収縮し牽引するという意味。寒邪が人体を侵入して体内の気機が収収斂すると、経絡や筋脈が収縮、拘急を起こす。寒邪が肌表を侵襲すると、毛竅、腠理は閉塞し、そのために衛気が影響を受けると、悪寒、発熱、 無汗などの症状が現れる。寒邪が血脈に宿ると、気血が凝滞し、血脈が攣縮して頭身疼痛などの症状が現れる。

寒邪が経絡、関節、筋脈に宿ると、四肢拘急や屈伸不利、或いは厥冷などの症状が現れる。

寒邪の構成図

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