中医学(中医学基礎理論・中医診断学・中医内科学)を詳しく説明する一般社団法人国際伝統中医学協会の「中医学大辞典」
病の原因

病の原因

病因

病因とは、すなわち疾病発生の原因である。

中医学では、臓腑や組織間及び人体と外界環境は、互いに対立しながら、同時に統一 されていると考えている。それらの間には絶えず対立を作り出し、その対立を解決し続けることによって相対的な動態バランスが維持され、生理機能が正常に保たれている。

こうした動態バランスが何らかの原因によって失調され、すぐに自己調節より回復することができないと疾病が発生する。身体のバランスが崩れると、様々な疾病が発生するが、その原因となるものを病因と呼ぶ。

中医学でいう病因の範囲はとても広く、内容も豊富である。それには気候の異常、疫病の伝染、精神的な刺激、飲食や過労、筋違い、打撲や切り傷、虫や動物に咬まれる傷害などがある。

また、臓腑気血の機能失調によって生じた病理産物、例えば、痰飲、気滞、瘀血なども発病因子となる。

また、発病中でも原因と結果が互いに影響し、病によって発生した物質や状態が、その後に違う病を引きおこす原因となったりする。例えば、痰飲や瘀血は、臓腑の気血機能が失調してできた病理的な代謝物であるが、そうした代謝物が逆に病を引きおこす原因にもなる。これらの発病因子の特質や特徴を知っていると、疾病の発生のメカニズムを解明することができる。中医学の病因認識の特徴は、症状を主な手がかりとして病因を解明することにある。

中医学の病因学説は、長期にわたる実際の観察と臨床を基礎にし、「弁証求因」(証を立てることによって病因を求めること)という方法を用いてこれを総括しながら形成されてきた。

古代の医家は発病因子を外因、内因、不内外因の3つに大きく分類している。

すなわち六淫の邪気が侵入したものは外因、精神的に傷ついたものは内因、そして飲食や過労、打ち身や切り傷、虫や動物に襲われて発病したものを不内外因と考えた。 発病要素 を発病する過程と関連つけた古人の分類法は、病を弁別する上で一定の意義がある。中医学では病因があるから発病すると考える。いかなる疾病でも、何らかの原因が影響して、身体に一種の病態反応が発生したものと考える。中医学の病因認識の特徴は、発病させたと考えられる客観的な条件だけではなく、病の症状を分析したり、兆候に基づいて推測したりし、症状を主な手がかりとして病因を解明することにある。

例)遊走性の全身の痛みや痒みという症状:

自然界の風邪が変動して一定のところに停まらないという特徴に似ているため「散風去邪」(風を散らし邪気を取り除く)という方法で治療すると症状は軽減、或いは消失する。このことから遊走性の痛み、重くなったり軽くなったりするという特徴をもつ疾病の原因は、風邪と関係が深いと推測することができる。

これがすなわち「弁証求因」の方法である。したがって中医学の病因学は、病因の性質と発病の特徴を研究するだけでなく、様々な発病要素によって現れた症状を検討し、診断と治療に役立てようとするもので ある。

六淫七情

飲食と労逸

飲食、労動、及び休息は人間が生存し健康を維持するための必要な条件である。しかし、規則正しく節度のある食事を摂らなかったり、過度の労働をしたり、適当な休息をとれなっかたりする場合には、生理機能に影響を及ぼし、気機が異常になり、正気を損傷し、すなわちこれらは発病因子になる。

適量の飲食、適度の労働、適当な休息 を行うことに普段から気をつけていると、疾病にかかりにくい。また、これらは正常な生理機能の保持、体質の強化、健康の維持に不可欠のものである。

外傷

外傷因子として、主に打撲、捻挫、刀傷、火傷、凍傷、虫獣傷などがある。

痰飲と瘀血

痰飲と瘀血は、ある種の発病要因が作用して疾病の過程で形成される病理変化及び病理的産物である。こうした病理的産物ができると、それが直接、或いは間接的に特定の臓腑組織を障害し様々な疾病を引きおこす。

したがって、痰飲と瘀血はただの病理変化と病理的産物であるだけではなく、発病要因の1つでもある。

発病

身体の臓腑や経絡が正常に機能し、気血陰陽のバランスが保たれていれば、「陰平陽秘」の健康な状態である。しかし、発病要素が作用して、臓腑や経絡の機能がおかしくなり、気血陰陽のバランスが崩れて「陰陽失調」の状態になると、種々の症状が発生して発病することになる。

発病の要因は非常に複雑であるが、突き詰めると、中医学では2つの要素が関与していると考えられている。

  • 生体自体の機能失調…正気の相対的衰弱
    邪気が生体に与える影響
  • 邪気が生体に与える影響

邪正と発病

正気とは、人の機能活動(臓腑や経絡、気血などの機能)や病気に対する抵抗力、自然治癒力などを指しており、それらを「正」と括っている。邪気とは、各種の発病因子を指しており、「邪」としてまとめている。

疾病の発生や発展変化は、一定条件下での邪正闘争の反映であるといえる。

正気不足は、疾病発生の内在原因:

中医学では人の正気を重要視している。生体の正気が旺盛であると、抵抗力も強く、病邪は簡単には人体に侵入できず、病は起こりにくい。これに反して、正気が衰退して抵抗力が弱まっていると、病邪は人体に侵入し、疾病を発生させる。

例)急に疾風や暴風雨に遭遇した場合、発病しない人がいる。それは、生体が健康で正気が虚していないため、邪だけでは人を損傷することができないからである。抵抗力が弱まっている条件と発病要因が揃って、始めて疾病が発生することになる。

したがって、正気不足は疾病発生の内在原因である。

邪気は発病の重要な条件:

中医学では正気を重要視し、一般状況下においてはより大きな要素を占めるのは、正気の強弱であるが、邪気の存在を無視しているわけではない。邪気は発病の条件であり、条件さえ揃えば、中心的存在になることがあり、病邪が発病の主体をなすこともあり、それは正気の抵抗力にもある程度の限度があるからである。正気に衰退がみられなくとも、強力な邪気が生体を襲ったために発病をまぬがれない場合がある。

例)強烈な伝染病や外傷など。

したがって、伝染病の予防には、正気を旺盛に保つばかりでなく、隔離や消毒によって強力な伝染性を持つ邪毒の気を避け、伝染病には近寄らないように忠告している。

正邪闘争の勝負により、発病するかしないかを決定:

正邪闘争とは、正気と病邪の闘いである。この闘いは、発病するかしないかを決定するだけではなく、疾病の進行と転帰にも影響する。

正が勝てば発病しない:

邪気が人体を侵襲すると、正気は邪気を攻撃する。正気が強くて邪気に充分抵抗することができると、病邪は侵入することができないし、侵入したとしても正気がそれを撲滅することができるので、病理反応が起こらず、発病はしない。

自然界ではいたるところに種々の発病要素が存在しているが、それと接触して発病しない人がいるのは、正が邪に勝っているからである。

邪が勝てば発病する:

正邪闘争では、邪気が強く、正気が邪気より不足し、抵抗する力が弱まれば、邪気が勝つことになり、それによ って臓腑の陰陽や気血が失調し、気機が逆乱して発病する。

発病した後、正気の強さと病邪の性質、軽重、部位によって異なる証候が現れる

発病した場合、正気の強弱や病邪性質の違い、また感受した邪気の強さ、邪気が留まっている 深さなどによって、異なった証候が現れる。

疾病と正気強弱との関係:

正気が強く、邪正闘争が激しいものは、実証が多い。 正気が弱く、邪に抵抗する力が弱まるものは、虚証が多く、或いは虚実錯綜の証となる。

疾病と病邪性質との関係:

陽邪を感受すると、陽が偏盛して陰を損傷しやすくなり、実熱証が現れる。陰邪を感受すると、陰が偏盛して陽を損傷しやすくなり、寒実証や寒湿証が現れる。

疾病と病邪軽重との関係:

邪気は、疾病が発生する重要な条件である。疾病の程度は体質によるだけではなく、感受した邪気の強さによるところも大きい。普通、邪が弱ければ病も軽く、邪が強ければ病も重い。

疾病と病邪部位との関係:

病邪が生体を侵入した場合、それが筋骨経脈に留まるものもあるし、臓腑に当たるものもある。病邪が留まった部位により、症状の現れ方も違う。

例)邪気が肺に留まると、悪寒、発熱、汗をかき、咳をするなどの症状が現れ、邪気が肝に留まると、両側   胸部、季肋部に痛みが現れ、邪気が脾胃に留まると、腸鳴や腹痛が起こるなどである。

内外環境と発病

疾病の発生は、内外環境と密接な関係がある。外の環境とは、生活や職場の環境のこ とであり、気候変化や地理的特徴環境衛生などが含まれる。内の環境とは、体内にある正気を指す。正気の強さは、体質や精神状態と関係する。

外の環境と発病

中医学は、人と自然には密接な関係があると考えている。人々は長期にわたる自然との闘いの中で、少しずつ自然へ適応するようになった。しかし、異常な気候変化、職場や生活環境の汚染、劣悪な環境衛生などの影響で人が病になることもある。

気候要因:

  • 六淫や疫癘などの発病因子は、気候変化と関係がある。
  • 春は風が強いので、風温病証が発生しやすい。
  • 夏は特に炎天下で大変暑く、熱病や日射病が発生しやすい。
  • 秋は空が澄んで乾燥した気候になり、燥病が発生しやすい。
  • 冬は厳寒な気候になり、寒邪を感受しやすい。同様に伝染病の発生と流行も、気候変化と密接な関係がある。特に異常な気候、季節外れの気候では、伝染病が発生しやすい。

例)麻疹・百日咳・流行性脳髄膜炎(脳膜炎)などは、冬から春に流行しやすい。細菌性下痢、流行性 B 型脳炎は、夏から秋に流行しやすい。それは特定の気候条件が、ある種の病原性細菌やウイルスの繁殖や伝染に適しているためである。

地域要因:

地域が異なると自然条件も異なるので、地域ごとに多発する病が変わる。

例)

地域によって特定の栄養素が不足し、風土病が起こることがある。

  • 中国の東南地方は海が近くて浜辺にあり、海抜が低くて温暖多雨、人々は魚をよく食べ、塩辛いものを好むため、痙瘍(オデキ)が出ることが多い。
  • 西北の高原地方は、乾燥して寒涼な気候であるから、寒い場所にいることが多く、肉やヨーグルト、牛や羊のミルクをよく飲み、体格は太っていて頑健なタイプであり、衛気が体表を密に固めているため、外邪が侵入しにくい。そのため、内傷病が多く発生する。

例)地方性甲状線腫は、沿岸部から離れている山村地方に発生しやすいが、その原因はヨード(ヨウ素;ミネラル)の欠乏である。

生活や職場環境:

煤煙や産業廃棄物には、身体の健康を害する毒物が含まれている。したがって、職場で有害物質に接していると、急性や慢性の中毒が起こる。粉塵が多すぎても正常な生理に影響し、様々な病理変化が現れる。 

さらに、農薬を使うようになったため、食物が汚染され健康にマイナスとなっている。この他、インフルエンザや麻疹、百日咳、肺結核のように呼吸道から感染する病気もあり、細菌性下痢やA型肝炎のように消化管から感染する病もある。

また、蚊や蝿も病を媒介するので、周囲の環境衛生が悪いと、蚊や蝿が繁殖し、空気や水源、食べ物が汚染されて発病する。

外の環境には、外傷や虫獣傷、精神刺激など、他の発病要素も存在する。また、過労、目の酷使、長く坐り、長く立ち、長く歩くなども発病の要素となっている。

内在環境と発病

中医学では、病原(邪)は発病の重要な条件であると考え、正気の絶対的、或いは相対的な不足は発病の内在原因であると考えている。また、体質の違いがあるため、外邪に対する感受性も異なる。

一般的には、体質と精神状態によって正気の強さが決まる。

体質と正気との関係:

頑強な体質を持っていると、臓腑機能が旺盛に活動するので、精、気、血、津液が充足し正気も充実している。虚弱体質では、臓腑機能が低下してお り、精、気、血、津液が不足するため、正気も減弱する。体質は先天の稟賦(遺伝)、飲食の営養、体の鍛錬などと関係がある。一般的には、先天が充実していれば、体質は頑丈であり、先天が不足であれば、虚弱体質となることが多い。

しかし、後天的な栄養摂取や運動による体の鍛錬も考慮に入れ る必要がある。合理的な食事と十分な営養は、身体を生長 させる必要な条件である。食事が不足して必要な栄養が摂取していないと、気血の化生に影響し、虚弱体質になる。しかし、暴飲暴食は脾胃を損傷し、偏食は体内に特定の物質が多くなり、或いは不足になるため、正常な生理機能に影響し、体質の増強にマイナスになる。適当な運動によ る体の鍛錬と肉体労働は、気血の循環をよくさせ、体質を強化することができる。

運動しないで体を全然動かないと、気血の循環が悪く なり、脾胃の働きが低下し、虚弱体質になる。

精神状態と正気との関係:

精神状態は、感情刺激に直接影響されるものである。幸せな気持ち、ゆったりした気分を持っていれば、気機がスムーズに流れ、気血が調和され、臓腑は正常に働き、陰陽もバランスの状態を保ち、正気が旺盛になる。

逆にいつもイライラして落着かなく、不満の気持ち、鬱積した気分を持っていれば、気機が逆乱し、気血が不和になり、臓腑の働きが低下し、陰陽のバランスが崩れ、正気が減弱になる。

したがって、日常から健全な精神状態を保つことに心がける必要があり、貪欲をなくし、どんなことがあっても平常心で対処し、いつも幸せ、感謝の気持ちを持って、楽しい気分で毎日を過ごすことにより、正気が旺盛になり、疾病の発生を予防する効果がある。

すなわち、正気は、発病の内在要因であるが、体質と精神状態は、正気の強弱に影響を与える。丈夫な体質であると、正気は充実し、病に抵抗する力が強く、病邪が侵入しにくい。たとえ邪気が侵入したとしても、病邪を追い出す力があり、病は進行しにくい。これに反し、虚弱体質であると、正気が弱くなり、病に抵抗する力も衰え、邪気が侵入して発病しやすくなる。

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