中医学(中医学基礎理論・中医診断学・中医内科学)を詳しく説明する一般社団法人国際伝統中医学協会の「中医学大辞典」
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聞診

聞診には、音声を聞くことと、臭いを嗅ぐことの二つの内容がある。

音声を聞くことは「聴音声」といい、患者の発音・言語・呼吸・咳・嘔吐・呃逆・噯気・太息・噴嚔・腸鳴などの音を聴くことである。臭いを嗅ぐこ とは「嗅気味」といい、患者の体や排泄物な どの臭いを嗅ぐことである。

『黄帝内経』では、音声・言語・呼吸などによって正邪の盛衰を判断することが記載される。

『傷寒論』と「金匱要略」でも患者の言語・呼吸・喘息・咳・嘔吐などが聞診項目として書かれている。
その後さらに後世の医者により、口と鼻の臭い、および各種の分泌物と排泄物などの異常な臭いも聞診の範囲に加えられた。
各種の音声と臭いは、全て臓腑の生理機能と病理反応が反映されたものであり、それらによって臓腑の状態を知ることができる。

聴音声

「気が動すれば声が出る」と述べているように、音声を発するには、気の流れが一番関係している。

また発声には肺、心、胃、腎、喉、舌、鼻などの臓腑器官が協調し、それぞれの役割を果たすことが必要である。

肺は気を主り、鼻、喉などの器官に関係するため、肺の宣発と粛降の働きが失われると、くしゃみ、しゃがれ声、濁声、咳喘などの症状が見られる。

心は神明を主るため、言語機能に関係する。宗気は胸にたま り、呼吸と循環の働きに関与するため、声の高さに関係する。

胃は下降の機能を調和するため、胃気が下降されずに上逆すれば、吐き気、嘔吐、呃逆、噯気などの症状が見られる。

そのほか、肝の疎泄機能、腎の納気機能、脾の運化機能が影響されると、異常の音声が現れる。

したがって音声を聴くことによって発声器官の病変をとらえるだけでなく、各臓腑の変化を知ることもできる。

正常な音声

健康な人の音声は個人差があるが、発声が自然で音調も流暢なのは正常な音声の共通点である。

また、音声は感情の変化とも関係があり、怒ったときの声はとげとげしく急であり、悲しんでいるときの声は悲しく途切れ途切れであり、楽しいときの声はのびのびとして緩やかである。

これら一時的な感情の変化による音声の変化は、正常な範囲に属し、疾病ではない。

病的な音声

1.発声

五音と五声

五音は角・徴・宮・商・羽のことを指し、五声は呼・笑・歌・哭(泣)・呻(しん:うめく)のことを指し、それぞれ肝・心・脾・肺・腎に対応する。

正常な場合は人間の情緒変化の現れであるが、疾病の場合は五臓の異常、特に情志方面の病変を示す。呼・笑・歌・哭・呻の異常な変化によって、それに対応する臓腑の病変を推測、判断できる。

声重

澄んでいない声のことで、すなわち濁声である。これは、外感風邪または湿濁阻滞で肺気が宣発できず、気道が詰まることによるものである。

常に鼻づまり、鼻水、咳、喀痰などの症状を伴う。

音唖と失音

音唖とは声が嗄れることで、すなわち嗄声であり、音声嘶唖(せいあ)ともいう。

失音とは、完全に声が出ないことである。

疾病の初期に音唖または失音が現れるのは実証である。これは、風寒や風熱などの邪気が肺を襲い、肺気が宣発できず清粛機能を失うことによるものであり、いわゆる「金実不嗚」である。

久病の場合、音唖と失音が現れるのは虚証である。精気が内傷され、肺腎の陰液不足による虚火が肺金を灼き、肺は損傷され、声が出なくなり、いわゆる「金破不鳴」(金が傷むと発声できない)である。

歌手や教師など職業性音唖は、気陰両虚や瘀血などの原因が考えられる。妊婦後期に、音唖または失音が現れることを「妊娠失音」または「子瘖」といい、これは胎児が母体の腎精の輸布を妨げ、精気が喉を上栄できなくなるためである。

声調

発声が高く有力でよく響くのは、宗気の充実によるもので、陽証、実証、熱証に属する。

声が低くて細く途切れがちであるのは、宗気が弱まるためであり、陰証、虚証、寒証に属する。

鼾(いびき)

いびきをかくのは気道不利によることであり、慢性鼻炎、肥満者、高齢者などによく見られ、痰湿、肺腎両虚、瘀血などの原因が考えられる。昏睡状態で、いびきをかくことは、熱入心包と肝風内動が考えられる。

呻吟(しんぎん)

呻吟は、苦しんでうめくことで、身体に痛みや脹満などの苦痛がある場合に見られる。

顔をしかめて呻吟するのは頭痛であり、起きずに呻吟するのは腰腿痛であり、手を腹部に当てて呻吟するのは腹痛であり、突然叫びながら恐怖を感じるのは驚風である。小児の夜泣きも驚風に属するが、心脾熱証または脾虚が考えられる。

2.言語

「言は心の声」であり、心は言語に密接に関係するため、言語の異常は心神の病変に属する。心のほか、宗気も関係している。

だるくて話すこともおっくうがるのは「懶言(らんごん)」という。懶言で言葉が少ないのは虚証と寒証に属する。
いらいらして口数が多いのは熱証と実証に属する。声が低く話が途切れるのは気虚である。

舌がもつれて言葉をはっきり話せないのは「言語謇渋(げんごげんじゅう:どもり)」 といい、風痰阻竅に属する。

意識が不明瞭で話のつじつまが合わず、声が高く有力であるのは「譫語(せんご)」といい、熱邪が心神を擾乱するためと考えられる。

意識がはっきりせず言葉が重複し、声が低く途切れるのは「鄭声(ていせい)」といい、心気衰微による精神散乱であり、虚証に属する。

独り言を話し、人が来ると止めるのは「独語」という。心気不足、気鬱痰結、痰迷心痰などが考えられる。

言語が錯乱するが、言った後で自ら気づくのは「錯語」という。これは、気滞、瘀血、痰湿などの邪気が神明を乱すことによる。

笑ったり怒ったりして、多弁、言葉の筋が立たず、また人を殴ったり物を壊したりする、誇大妄想などの症状を伴うのは「狂言」といい、実証と熱証に属し、痰火擾心と傷寒蓄血証にはよく見られる。

3.呼吸

肺は呼吸と気を主り、腎は納気を主り、したがって、肺、腎は呼吸に密接に関係する。呼吸が粗く速いのは熱証と実証に属する。

呼吸が弱く細いのは虚証と寒証に属する。異常の呼吸には、喘・哮・上気・少気・短気などがある。

喘(たん)

喘とは、息切れで苦しい、呼吸が短促急迫(浅く速いこと)であり、いわゆる呼吸困難である。ひどくなると、鼻翼煽動、口を開け肩で息をする、横になることができないなどの症状が見られる。

喘は実喘と虚喘に分けられる。実喘は、発作が速い、気粗(息が荒い入呼気時に気分が楽にな流、脈が実で有力、舌苔が厚膩などの症状が見られる。これは痰熱壅肺によるものである。

虚喘は発病がゆっくりで、声は低くて弱い、気微(息が細く浅く途切れ)、深く吸気すれば気分が楽になる、動くと息切れがひどくなる、脈が弱い、などの症状が見られる。これは肺腎虚損で気が摂納作用を失うために起こる。

哮(こう)

哮の本義は荒々しくほえるという意味であるが、中医学の哮は、呼吸が短促急迫で喘に似るが、喉にはゼーゼーと痰鳴を伴うことであり「喘息」に相当する。これは、もともと宿痰が体内に伏し、外邪を受けると、体内の痰飲が刺激されて発作する。

そのほか、疲労、緊張、および塩辛い物、生もの、冷たい物などの原因で誘発されること もある。その発作をくり返し、完治し難い。

上気

上気とは、気が喉まで上逆し、そのために気道が塞がれ呼吸が荒くなることである。これは、外邪、痰飲、熱盛などの原因で、肺が宣発粛降できなくなり上逆することによる。

短気

短気とは、呼吸が浅くて速いことであり、ひどい場合、息切れを伴う。喘と哮に似るが、肩で息をすることや喉の痰鳴が見られない。

短気は虚と実に分けられる。息が荒い、胸悶や胸腹脹満を伴えば、痰飲、気滞、瘀血などの原因が考えられ、実証に属する。
日頃、体が虚弱で、声が低い、息が細い、倦怠無力などの症状を伴えば、肺気不足による虚証である。

少気

少気は「気微」ともいう。呼吸は細く弱く、また声は低くて懶言を伴う。

少気は、諸虚証でよく見られ、特に気虚によるものがほとんどである。

4.咳嗽

声があり痰がない ものは「咳」、痰があり声がない ものは「嗽」、痰もあり声もある ものは「咳嗽」という。

しかし、現在では一般的に、痰の有無に関わらず、すべての咳を咳嗽としている。

咳嗽は、肺気上逆による症状であるが、他の臓腑とも密接な関係を持つ。

咳嗽に伴う痰の特徴と随伴症状から疾病の寒熱虚実を鑑別することができる。詳しくは、『痰の望診』を参照のこと。

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咳嗽の音が重濁であれば、寒湿に属する。

咳嗽の声が低く、痰が多く吐き出しやすいのは、寒証、湿阻、痰飲などの原因が考えられる。

咳嗽時、痰がない、あるいは痰があっても少し出るのは、津液不足や陰虚による嗽咳である。

咳嗽時、痰が濃くて黄色い、粘稠で吐き出しにくい、咽喉が乾燥して腫痛するのは、肺熱に属する。


咳をする力もなく、声が低く痰が白く薄い場合は、肺気虚に属する。

短く連続した咳が「コンコン」と5-10回発作的に続き、その後「ヒュー」と息を大きく吸い込む発作を繰り返し、最後に粘稠な痰を出して発作は止むが、ひどい場合、嘔吐と喀血を伴うこともある。これは頓咳または百日咳という。

小児に見られ、肺実証に属する。その発病の原因は、風邪と痰熱が結びき体内に伏し、気道を塞ぐためである。

5.嘔吐

嘔吐は嘔・乾嘔・吐の三種類に分けられる。

嘔吐時、声と嘔吐物がともにあるのは嘔であり、声があり嘔吐物がないのは乾嘔であり、声がなく嘔吐物があるものは吐である。

三者はともに胃気上逆を示すが、嘔吐の特徴から病の寒熱虚実を知ることができる。詳しくは『嘔吐物の望診』を参照のこと。

吐き出す勢いが緩徐で声が低い、嘔吐物が水か痰涎のようなものを呈することは、虚寒証に属する。

勢いが激しく声が高い、嘔吐物が粘り気があり黄色くて苦いもしくは臭味を帯びるのは、実熱証に属する。甚だしい場合、嘔吐物が勢いよく噴き出て、これは神明が熱に乱されるためである。

朝食べたものを夕方に吐き出すのは「朝食暮吐」といい、脾腎陽虚に属する。ロ渇で水を飲みたがるのに、飲むとすぐ嘔吐をするのは「水逆症」であり、太陽蓄水証や痰飲内停が考えられる。

6.呃逆(しゃっくり)

呃逆は、胃気が上逆し、のどから不随意性で特殊な音声となるものをいい、すなわちしゃっくりである。呃逆の長短、音声の高低、間歌の時間などにより疾病の寒熱虚実を診断できる。

病の始めに、呃逆の音声が有力であるのは寒邪や熱邪が胃にとどまるためである。久病で咆逆の音声が低くて弱いのは胃気が絶えようとする前兆である。

呃逆が連発し有力で、音声が高くて短いことは、実証と熱証に属する。

咆逆の音声が 低くて長い、間歌も長いことは、虚証と寒証に属する。

呃逆の音声が高くもなく低くもない、持続する時間が短く、患者の気分はすっきりし、そのほかの随伴症状が見られないのは、一時的な気逆のためか、または風寒に当たったため、もしくは食物を急いで飲み下したためである。

7.噯気

噯気は、気が胃中から上に向かって喉に出て音となるものをいい、胃気上逆の一種で、すなわちげっぷである。

食後に時々起こる噯気は、病変とは言えないが、噯腐呑酸と胸脘脹満を伴うのは、食滞胃脘に属する。

胸脇脘腹脹痛を伴い、症状は情緒変化に左右され、噯気の後脹痛が軽くなるのは肝気犯胃に属する。

噯気の音が低い、酸腐臭がない、食欲不振を伴う場合は、脾胃虚弱に属し、老人や慢性病の患者によく見られる。

8.太息

太息は、すなわちため息で、肝気鬱結の現れである。

憂鬱で、胸脇苦悶(苦しい)を感じるときに太息をすると気分が軽くなる。

9.噴嚔(ふんてい)

噴嚔は、すなわち、くしゃみである。これは、肺気が急に鼻まで上昇して起こるもの であり、外感表証によく見られる。

10.腸鳴

腸鳴とは腹中でごろごろと音がすることである。腸鳴する部位と音により病位と病性が判断できる。

脘腹脹痛、噯腐呑酸、矢気(おなら)を伴えば、食積である。

胃脘部でどろどろした液体を袋に包んだように振動する音がし、立ち上がるまたは上半身を起こすと、その音が腹部へ移るのは、痰飲が胃に停留したためである。

腹部に空腹時のような音があり、湿めるまたは食事をとると音が軽減し、食欲不振や下痢を伴うのは、中焦虚寒である。

腹部脹満疼痛、腸鳴がまったくないのは胃 腸気滞に属する。

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